[か]
仮換地 換地処分を行う前において、土地の区画形質の変更若しくは公共施設の新設若しくは変更に係る工事のため必要がある場合又は換地計画に基づき換地処分を行うため必要がある場合に、従前の宅地について、その宅地に代わって仮に使用収益することのできる土地として指定された土地(土地区画整理法(昭和29年5月20日法律第119号)第98条第1項)。仮換地が指定された場合においては、従前の宅地について権原に基づき使用収益することができる者は、仮換地の指定の効力発生の日から換地処分の公告がある日まで、仮換地を使用収益することができるが、従前の宅地については、使用収益することができず、仮換地について権原に基づき使用収益することができる者は、その間仮換地を使用収益することができない(土地区画整理法第99条第1項、第3項)。
仮差押 金銭債権について、将来強制執行をすることができなくなる、又は、強制執行をすることが著しく困難になるおそれがあるときに、 債権者の申立てに基づく裁判所の決定により、債務者の責任財産を仮に差押え、その処分権を制限すること。仮差押の目的とすることのできる財産権の範囲は、本差押たる強制執行の目的物の範囲と同一であり、換価可能なあらゆるものが対象となり得、一定の範囲のものは仮差押が禁止される(差押禁止動産につき、民事保全法第49条第4項、民事執行法第131条、差押禁止債権につき、民事保全法第50条第5項、民事執行法第152条)。仮差押の申立は、その趣旨を明らかにし、保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を疎明して、これをしなければならない。 仮差押の審理においては、通常、口頭弁論や債務者の審尋は行われない。担保不動産競売による差押や、強制競売による差押と異なり、換価、配当の手続には移行しない。差押の登記前にした仮差押の債権者は、競売手続きにおいて、配当を受けることができる(民事執行法第87条第1項第3号)。仮差押後なされた譲渡や担保設定等、債務者の処分行為は、これを仮差押債権者に対抗できないが、処分行為そのものができなくなるものではない。仮差押の申立ては、時効中断の効力を有する。
仮差押解放金 仮差押命令において、仮差押えの執行の停止を得るため、又は、既にした仮差押えの執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭(民事保全法第22条第1項)。この金銭の供託は、仮差押命令を発した裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない(民事保全法第22条第2項)。
仮差押命令 金銭債権について、将来強制執行をすることができなくなる、又は強制執行をするのが著しく困難になるおそれがあるときに、 債権者の申立てにより、債務者の責任財産を仮に差押え、その処分権を制限する裁判所の決定(民事保全法第20条第1項)。仮差押命令は、金銭債権が条件付又は期限付であっても、これを発することができる(民事保全法第20条第2項)。又、特定の物について発するのを原則とするが、動産については目的物を特定しないで発することができる(民事保全法第21条)。
仮執行宣言 財産権上の請求に関する判決について、その確定を待たずに、裁判所が必要と認めるときに、申立て又は職権でなされる、担保を立て又は立てずに、仮に執行をすることができる旨の宣言(民事訴訟法第259条第1項)。仮執行宣言は、判決の主文に掲げられてなされる(民事訴訟法第259条第4項)。仮執行宣言により、判決が確定するまでに相当の時間を要することによる勝訴者(債権者)の不利益を回避することが可能となる。
支払督促における仮執行の宣言は、裁判所書記官によってなされる(民事訴訟法第391条第1項)。
少額訴訟(簡易裁判所における、訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴え)の請求を認容する判決については、裁判所は、職権で、仮執行宣言をしなければならない(民事訴訟法第376条第1項)。
仮執行宣言付判決、仮執行宣言付支払督促は、債務名義となる(民事執行法第22条第2号、第4号)。
仮処分 建物明渡請求権などの非金銭債権について、強制執行を保全するための手段で、「係争物に関する仮処分」と「仮の地位を定める仮処分」とがある。「係争物に関する仮処分」は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなる、又は、権利を実行するのが著しく困難になるおそれがあるときになされ、主なものとして、1.処分禁止の仮処分(民事保全法第53条〜第55条)、2.占有移転禁止の仮処分(民事保全法第62条)が挙げられる。「仮の地位を定める仮処分」は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときになされ、例としては、1.(代表)取締役の職務執行権限を剥奪して職務代行者を選任する仮処分(民事保全法第56条)、2.解雇を無効として、労働者の地位を認め、給料の支払いを命じる仮処分などがあげられる。仮処分の審理は、原則、口頭弁論又は債務者の審尋をすることを要しないが、「仮の地位を定める仮処分」については、原則、口頭弁論又は債務者の審尋をすることを要する。仮処分の申立ては、時効中断の効力を有する。
仮処分解放金 保全すべき権利が金銭の支払を受けることをもってその目的を達することができるものであるときに限り、仮処分の執行の停止を得るため、又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額。仮処分命令において、債権者の意見を聞いて、裁判所が定めることができる。「仮差押解放金」と異なり、その定めは、任意的である。
仮処分命令 非金銭債権について、強制執行を保全するための裁判所の決定。債権者の申立てによりその趣旨を明らかにし、保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を疎明することにより発せられる。
仮登記仮処分 旧不動産登記法(明治32年2月24日法律第24号、平成17年3月7日廃止)において規定されていた、仮登記義務者の協力が得られないときに、仮登記権利者の申立てにより、裁判所がする仮登記を命ずる処分。「仮処分」の文言が用いられていたが、民事保全法上の仮処分ではないことから、新不動産登記法(平成16年6月18日法律第123号、平成17年3月7日施行)においては、その混同を避けるため、「仮登記を命ずる処分」と改められた。
仮登記担保 金銭債務を担保するため、その不履行があるときは、債権者に、債務者又は第三者に属する所有権その他の権利の移転等をすることを目的としてされた、代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約、売買予約等の契約を締結し、担保の目的物につき、仮登記又は仮登録をすることによる非典型担保。
仮登記担保は、従来から判例により認められていたもので、「仮登記担保契約に関する法律(昭和53年6月20日法律第78号)」が制定され、その性質は抵当権に類似するが、制限物権型(担保の目的物の権利を債権者に移転しない)の担保権ではなく、権利移転型の担保権に属し、一般的には、非典型担保として扱われる。
不動産については、「条件付所有権移転仮登記」又は「所有権移転請求権仮登記」(不動産登記法第105条第2号)を行う。被担保債権等は登記されず、不動産登記の記載上、担保目的でないものとの差異は無いため、競売手続においては、債権届出の催告を行い、担保目的のもの(担保仮登記)であれば、抵当権同様に取り扱い、手続きを進行させ、担保目的でないもので最先順位のもの(売却により消滅せず、買受人が引き受けるべきもの)である場合は、手続きは停止される(仮登記担保契約に関する法律第17条第1項)。
不動産についての仮登記担保は、競売手続において弁済を受ける順位については、抵当権とみなされる(仮登記担保契約に関する法律第13条第1項)。 仮登記担保契約で、消滅すべき金銭債務がその契約の時に特定されていないものに基づく担保仮登記(根仮登記担保)は、強制競売等においては、その効力を有しない(仮登記担保契約に関する法律第14条)。
仮登記担保契約が不動産の所有権の移転を目的とするものである場合には、予約完結の意思表示をした日、停止条件が成就した日等、その契約において所有権が移転するものとされている日以後に、債権者が清算金(不動産の価格が債権等の額を超過する場合のその超過額)の見積額(清算金がないと認められるときは、その旨)をその契約の相手方である債務者等に通知し、かつ、その通知が債務者等に到達した日から2ヶ月を経過しなければ、所有権移転の効力は生じない(仮登記担保契約に関する法律第2条第1項、第3条第1項)。この場合、担保仮登記後に登記がされた抵当権等を有する者は、その順位により、債務者が支払いを受けるべき清算金に対してもその権利を行使することができるが、清算金の払渡し前に差押えをしなければならない(物上代位、仮登記担保契約に関する法律第4条)。
債務者等は清算金の支払を受けるまでは、清算期間が経過した時から5年が経過したとき、又は第三者が所有権を取得したときを除き、債権等の額に相当する金銭を債権者に提供して、不動産の所有権の受戻しを請求できる。(仮登記担保法第11条)。
(→譲渡担保)(→所有権留保)(→再売買の予約)(→買戻しの特約)
仮登記を命ずる処分 仮登記義務者の協力が得られないときに、仮登記権利者の申立てにより、裁判所がする仮登記を命ずる処分(不動産登記法(平成16年6月18日法律第123号)第108条第1項)。この申立てに係る事件は、不動産所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属し、仮登記権利者は、仮登記の原因となる事実を疎明しなければならなず、申立てを却下した決定に対しては、即時抗告をすることができる
(不動産登記法第108条第2項〜第4項)。
仮登記権利者は、仮登記を命ずる処分の決定正本を添付して、単独で仮登記の申請をすることができる(不動産登記法第107条第1項)。仮登記を命ずる処分の決定正本は、登記原因証明情報となる。
旧不動産登記法(明治32年2月24日法律第24号、平成17年3月7日廃止)においては、「仮登記仮処分」と称していたが、民事保全法上の仮処分ではないことから、その混同を避けるため、「仮登記を命ずる処分」と改められた。
Copyright (c) 2008 Global Legal Office All Rights Reserved